2001/02/20
ユースホステルの朝食はバケット、コーンフレーク、紅茶、コーヒー、オレンジジュース。茶色い粒々したものは、シリアルの一種かと思ったらチョコレートドリンクの素だったらしい。アジア人に馴染みないものに出会うとちょっと嬉しくなる。
カレー駅で久しぶりにユーレイルパスを見せると「ノープロブレム」と改札を通らせてくれた。切符を買うのに手間取っている旅人を横目に、颯爽と改札を抜ける。これが非常に気持ちがよく、水戸黄門が印籠を出した時の気分はこんな感じなんじゃないかとどうでもいいことを想像してみる。パスを使って1等車両にも乗れたけど、身分不相応な気がしてしまうのであえて2等車両に乗り込む。車体も、列車のドアの色も、客席も、フランスというだけで全てがオシャレに見える。いざ、パリまでの三時間、フランス鉄道の旅始まりだ!
ところで、フランスに着いて念願叶って世界最高硬度の水「コントレックス」を購入。2001年当時の日本では店頭で見かけることはなく、本で読んだだけの知識だったため、本場で売られているのをみてひどく感動した。また、ボルヴィックやエビアンという日本で見たことのある水もイチゴやレモン、ブドウなどのフルーツフレーバーの種類が豊富でびっくり。いやいやいいね。こういうの非常にいいね!
気分よくパリ北駅に到着。ブルージュの宿で会ったマリアからパリの安宿情報をもらっていたので、早速宿に向かうとまさかの満室。え!オフシーズンなのにこんなことあるの??
仕方なくロンドンの宿で聞いたバスティーユ広場近くの宿に行くと、住所の書き間違いか?全くたどり着けない。パリのオーステルリッツ駅に行くと、ツーリストインフォはパリリヨン駅だと言われ、もうすでにパリという街の大きさを感じてうんざりし始めた。
かくかくしかじか(宿探しが大変すぎて説明するのもしんどい笑)ようやくリヨン駅近くの安宿に辿り着いた。荷解きを済ませ、身軽になって改めて街に出るとさすがパリ!見えるもの全てがスキ無く圧倒的輝きを放っているように見える。威圧感すご!
小腹が空いたのでパン屋で一番安いバケット(57円程度)と、スーパーでパテと洋ナシを購入して公園で食べると、え!と思わず声が出るほどパンが美味しい。ユースホステルの朝食のパンもだったけど、やっぱりビックリするくらいパンが美味しい。
曇り空でもエッフェル塔は美しい。

宿に戻るとたくさんの日本人が宿泊しているようだった。話を聞くと、ほとんどが大学生で卒業旅行で来ているらしい。なるほど!だから満室の宿もあったわけだ。初めての海外旅行という子も少なくなく、ガイドブックに赤丸付けて片っ端から観光地巡りを計画している子がほとんどだった。中には「ミシュランの星付いてる店を回る」という男の子もいて「そんなにグルメなの?めっちゃお金かかるね」と言ったら「いや、食事はしないっす!有名店の前で写真を撮るのが目的っす」という子も…。ああ、同じ日本人としてそれは恥ずかしい…なんてことは言えずに話を聞いていた。
翌日は徹底的にパリを歩き回るつもりで、宿で地図を頭に叩き込んだ。宿を出ると、大学生のキヨノリ君が、バスティーユ広場に行きたいというので道案内をしてあげた。すると、私のパリ散歩に同行したいという。いや、私めっちゃ歩くよ?と言うも「野球部なんで全然平気」とのこと。まあ、困ったら撒けばいいか(ひどい笑)…と思いながら歩き始めた。
パリリヨン駅からざっとバスティーユ広場、ルーブル美術館(見学は以前したことがあったので、今回は通るだけ)、コンコルド広場、シャンゼリゼ通り、凱旋門、エッフェル塔、サンジェルマンデプレ教会。私の目的はとにかく街歩きをすること。観光地はそのポイントに過ぎない。
この地図だけ見ると近そうに思うかもしれないが、なんとこの日は33,000歩歩いた。
キヨノリくんは中央大学で経済を学んでいるとかで、パリにいる間にシトロエンやプジョーなどを訪れて車の流通や販売促進など経済に関することを学べたらと思っているらしく、私なんかよりしっかりとした目的をもってこの地にやってきたことを素直に尊敬した。
そして、気が付けば本当に楽しい観光になってた。
凱旋門ってナポレオンが死んだ後にできたから、ナポレオンは遺体になってからここを通ったらしいとか、エッフェル塔はこの渋い色合いがパリの街に馴染んでていいよねとか、サンジェルマンデプレ教会はフランス最古なだけあって、古くて品があり、彫刻より壁画が多かったのが印象的だよねとか、こういうことを話せる相手がいるってほんっと素晴らしい。
とはいえ、キヨノリくん後半はかなりバテ気味で、宿に戻ってからみんなと談笑しているときに「女の子に負けてたまるかと、必死になって付いて行った」とこぼし「でも、歩いてよかった。歩いたからこそ理想の一日になった」と言ってくれた。ああ、よかった!!!
このキヨノリくんとは、帰国後一回だけ東京で会って、蕎麦を一緒に食べた記憶がある。十数年後にはSNSでも繋がることが出来、彼は現在起業して社長として活躍している様子。
食事は昼も夜も買ってきたバケットにパテ塗って、チーズやトマトなどをサンドして食べた。しかしもう何もかもが美味しくて、ちょっとびっくり。目に見えるもの、口にするもの、なにもかもが完璧すぎて、パリって私にはちょっとだけ居心地が悪い場所のような気がしてならなかった。