2001/01/16
目が覚めて、まだ薄暗い中港を散歩した。今日はいい天気になりそう。足の痛みさえなければ……辛い。
このままではいけないと、あまりの足の痛さに薬局に入ってみた。必死に足の痛みを訴えるもなかなか伝わらず。湿布くれよおおお。ドイツならなんかめっちゃいいのありそうやん!いや、絆創膏ちゃうよ!血なんか出とらんし。よく分からない塗り薬に高いお金を払うわけにもいかず、スゴスゴと退散。完敗。無念。
宿に戻るとオーナーが今作ったばかりだという温かいお茶を出してくれた。あーーーーー五臓六腑に染み渡る。泣けてくる。「これは何?」と聞くと、生の生姜とカモミールに似た小さなドライハーブを煮て作ったものだとか。そこにフラフラと二日酔いの男の人がやってきて同じお茶を飲んで同じリアクションしてた。2人とも緩みきった顔して並んでお茶を飲んで一息ついた時、歩きすぎて足が痛んだことについて話してみたら、謎に爆笑された。いやいや心配するところだろ。二日酔いだと?こっちこそ笑ってやる。お茶のおかげでだんだん元気がわいてきて、どうでもいいことまで可笑しくなってきた。そして笑っているところに他の旅人も加わって、いつの間にかリビングは賑やかな雰囲気に包まれていた。
二日酔い男は30代半ばくらい。男3人で旅してるらしく、彼らはアメリカ出身のミュージシャンだとか。いろいろ音楽のこときかれたけどさっぱり分からなかったので、アイドンノーを繰り返すばかり。日本人は音楽に疎いと思われてしまった。ごめんなさい。
なんだかすっかり気持ちが元気になって街歩きを再開すると、さっきのバンドメンバーの1人ジムが追いかけてきた。「一緒に行こうよ」と。
カフェでコーヒーを飲みながら足が痛いことを伝えると突然立ち上がりどっか行ってしまった。しばらくして戻ってくると「薬局を回ったけど、実際ノゾミの足を見せた方がよさそう」とのこと。えー!1人で薬局行ってくれてたの!?優しいジムは薬局で店員さんに英語で説明をしてくれ、足を固定するサポーターを買ってくれた。ああ神✨めちゃくちゃ楽になった!「私が薬局でうまく英語で説明できなくてごめんね」って言うと「俺も日本語話せないから同じだよ」と。惚れそう。
そして、こっちに来てからネットカフェでメールを読もうとしても日本語対応してなくて全く読めないことを話すと、これまたジムがネットカフェ見つけてくれて、お金まで払ってくれて日本語読めるPCを探してくれた!久々皆からのメッセージ読んで泣きそうになる。こちらからの返信はローマ字入力しかできなかったけど、それでも日本のみんなに生きてることを伝えられてめっちゃ安心した。そんでもってなんと夕食は伝統的ドイツ料理の店に連れて行ってもらった。ジムうううううう。しがないミュージシャンのくせに、私なんかのためにそんなにお金使って大丈夫?しかし、ここ数日はパンとチーズをかじるような生活だったので、欲に負けて断ることも出来ずお言葉に甘えてがっつりご馳走になった。トマトとモッツァレラとナスにクリームソースかけて焼いたようなもの。最高よ、ジム。
食後はすぐに宿に戻り、みんなと地図を広げて談笑。この時間がもう最高に楽しかった。
皆によく尋ねられたのは「なぜ1人で旅をしようと思ったの?」と。「日本人は団体で行動しがちで英語を話そうとしないのに、ノゾミはなぜ英語もロクに話せないのになぜだ?」
うーん、私の拙い英語で伝わるか分からないけど「団体で行動すると行動範囲が限られるから。たくさんの経験をしたい。挑戦をしたい」と言うと「それで?何になりたいの?目的は?」と聞かれていよいよ答えられなかった。ルームメイトのステファニーもジムも、その場にいる皆それぞれがなにかの目的そして仕事を持っていた。
私は……
私は現実から逃げているのだろうか。この旅は無意味なものなのだろうか。私という人間は中途半端な生き方しかできないのだろうか。
3ヶ月の間にその答えが見つかることを期待したいが、そもそも旅の意味や答えなんてあるのだろうか。自問自答が続いた。