ベルリン市内をひたすら歩き回ったけれど、寒いのと足の痛みで十分に楽しめず、もっとこじんまりとしたのどかな田舎町に行きたくなった。そういえば以前母が「港町リューベックは素敵よ」と言っていたのを思い出す。そうだ、リューベックという街に行ってみよう。
Davidたちに置き手紙をして早朝に出発。ベルリンの太陽はライトに過ぎず、明るく照らしてはくれても暖かさを感じない。ベルリンからハンブルグでリューベック方面に乗り換え。ハンブルグもなかなかの都会だ。今は全く心惹かれず。
12時リューベック到着。なんと静かでなんと薄暗い駅。安宿探しのためインフォメーションに行くと14時まで昼休みだとか!長すぎやろ!(日本じゃ考えられないけど、ヨーロッパでは割と普通)
もう夕方まで宿探しなんてこりごりなので、一刻も早く宿探ししたいのに…涙
と途方に暮れたその時、荷物の中の紙ゴミが目に入った。最初ハンブルグに行くつもりでインターネットで宿情報探してプリントアウトしたものの、ハンブルグに行かなかったので破り捨てたはずが、1枚残っていてその中に1件リューベックの安宿が載ってた!きゃー!ナイス私!
中世の面影を残す雰囲気のある石畳の街。様々な文化を感じる建造物、レンガを積み重ねて建てられた古い教会。そして何より静かでありながらもどこか活気を感じる。そういえばリューベックはギルド、つまり商人の町だと聞いたことがある。これがギルドの活気なのか。色とりどりのフルーツ、チーズ、肉が人々の笑顔と共に売られている。ベルリンとは違い、私の見る景色に鮮やかな色が加わったように感じられた。
今回の宿探しは神様が私を見捨てなかったということだろう。紙ゴミのおかげでいとも簡単に見付かった。Rucksackという名前の安宿で1泊約1,000円。小綺麗でまるでペンションのような温かさを感じる。目の前はハーバーでロケーションも最高。(なんと2025年現在、ストリートビューで確認したらまだ存在してた✨)
中に入るとそこにいた旅人全員がどうぞどうぞと手招きしてオーナーを紹介してくれた。やった!空き部屋もあるらしい。
荷物を下ろして安心して食料調達のために軽装で街に出る。ああ、なんて身軽なんだ。まるで魔女の宅急便にでも出てきそうなパン屋でパンを買い、肉屋とチーズ屋でそれぞれ初めて量り売りのハムとチーズを購入し、白ワインをまるで水のように飲む。あああ、幸せだ。やっとこんな気持ちになれた。これこそ求めていたものだ。リューベック、ここは天国なのか。
いや、何かが足りない。そう、寂しいのだ。心のどこかが物足りない。もしかしたら天国はそういう所なのかもしれない。そんなことをほろ酔いの頭で自室でぼんやり考えていたら、21時、突然人が入ってきた!びっくりしたあああ。今到着したという学生ステファニー。おお!ルームメイトよ!私はあなたという存在を待っていたのよ。初対面から数分で強引にワインで乾杯。「プロスト!」
人が恋しかったのだ。そして言葉もろくに通じない初対面のルームメイトによってこんなに心が温かくなるとは。やっと心穏やかに旅の夜を迎えられた気がした。