㉔ポルトガル(ポルト)→(リスボン)→(ロカ岬)・・・ここに地終わり海始まる

 2001/03/04

少し元気を取り戻したら幽霊ホテルにいられる気分でもなく、別の宿に移ることにした。

新しい宿に荷物を置いて外に出ると、久しぶりの青空。鼻に届く春のにおいにハッとして思いっきり深呼吸をすると、自分が生まれ変わったような新鮮な心地と共に、この数日間はあの宿を含め私は何かにとりつかれていたのではないかとすら思えてきた。とはいえ生理の影響もありまだまだ体は重ダルい。ちなみにポルトガルの生理用ナプキンは20個入りで100円弱(2001年当時)。個包装ではなく、外装を開けると折りたたまれていないまっすぐな状態のものがびっしり入っていて、持ち運びにくいなあと思った記憶がある。こういう日用品こそお国柄が出ていて面白い。

これまで歩いたヨーロッパとは明らかに違う異国風情を感じるポルトの街。

街の中を流れるドゥエロ川とその川にかかるドンルイス一世橋。この橋は上下二層構造になったアーチ形で、とっても美しい。


飲むこと食べることが大好きな私がつい気にしてしまうのはやはりこういう店。ほらほら、お茶のこと「tea」ではなく「cha」って書いてある!!!
こうなったら本当に「チャ」っていうのか試してみたくなってカフェに入ってあえて"Tea please."って言ってみたら「は?」みたいなリアクション。おおお!やはりそうか。改めて"チャ please."って言ったらティーバッグの入ったアルミのポットと厚みのあるティーカップを持ってきてくれた。硬水で入れているからかあまりおいしいとは思わなかったけど笑、こんな西の果ての街で「茶」が通じたことがすごく嬉しかった。
ちなみに「チャ」よりも「シャ」の方が通じるっぽい。
そしてどのカフェでもカステラや菓子パン系のものがずらりと並んでいて、多くの人は立ったまま大きな口を開けて頬張っている。その食べ方がもう本当に美味しそうだった。

さて、ポルトの町は川沿いにポートワインのワイナリーが続いていて、これは一度本場のポートワインを飲んでみなくてはと俄然やる気が出てくる。ところがどこに行ってもオフシーズンだからか開いていないと断られる。(↓有名なSANDEMANのワイン工場)
しかし一カ所「試飲だけならいいよ!」と言ってくれるワイナリーがあった!それが"Caves Vasconcellos"。そもそもポートワインというのはあまり飲んだことはなかったけれど、初めて飲んだ時の感想が「絵本に出てくる葡萄酒ってこんなイメージ」だった。
濃厚で甘くて、口に含むとアルコールでふわっとしちゃう。これこれ‼葡萄酒と言えばワインじゃなくてこっちだよ。
本場のポートワインはさらに香り高く、美味しい。20年物のタウニーや、凡人にはちょっとビックリしちゃうような味わいのヴィンテージなど、何種類も味見させてもらえた。いやもう最高。
とはいえまだ万全とは言えない体調で、何か食べるとトイレに直行。体が食べ物を拒絶しているらしい。せっかくのポルトガルなのに茶とポートワインに支えられてる。それでも少しずつ良くなりつつはあるので、リスボンに移動していざ目的地の一つでもあるロカ岬目指すことにした。

駅はとても雰囲気があって映画にでも出てきそうな雰囲気。
ポルトガルの歴史的な戦いを描いた駅の壁。これは全てアズレージョと言ってポルトガルのタイルらしい!青と白が美しく、タイルは約2万枚使用しているとか。圧巻。駅というよりもはや美術館。世界遺産にも登録されているらしい。
ポルトから列車に乗ること約三時間。首都リスボンへ。あいにくの雨で、リスボンはほとんど街歩きできなかった。翌日雨が上がった隙に近くのカスカイシュという街に移動し、バスに乗り換えてロカ岬へ。
だんだんと目の前に海が広がってくる。果てしなく広がる大西洋。キラキラと光る波のせいだけじゃなく、いろんな思いが溢れて全てのものが眩しく、目を開けていられなくなる。感情が溢れ出して喉の奥がぎゅっと苦しくなってきて、ついには目頭までカッと熱くなってきた。
まるで私が来るのを迎えてくれるかのように雲が消え、青空が広がり始めた。
大学時代に読んだ宮本輝の「ここに地終わり海始まる」を思い出す。バスを降りて深呼吸。
ああーーーーーーー、ついについにここにやって来たんだ。
(ロカ岬で発行してもらえる最西端到達証明書)
寒く冷たくただひたすら足が痛かったあのベルリンから、西へ西へ、ついにユーラシア大陸最西端までやってきたのだ。思い出が次々とよみがえって泣きそうになる。
目を閉じると爽やかな風と花の香りが鼻孔をくすぐる。我ながらよくやった。よく私をここまで連れてきてくれたと自分に感謝する。よくやった…!
緑の大地に黄色い小花、その先には真っ青な海。海。海。もう、ここが天国なのかと思えてくる。

行こう。今度は東へ!
どんな出会いが待っているのか、どんな街を歩けるのか、ロカ岬でたくさんのエネルギーをチャージして、いざ折り返しの旅に出た。



*ここから先が激動のスペイン旅となるのだが、残念なことに画像データが全て失われてしまったため、拙い文章のみとなります。ご了承ください…


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