㉕スペイン(トレド)・・・古都トレドと変態おやじ

 2001/03/08

(ここからしばらくは画像データが消えてしまったためほぼ文字のみとなります。泣)

ポルトガルからリクライニングシートの夜行列車で再びスペインの首都マドリッドへ。体調不良(随分回復)と疲れからか、幸いぐっすりと眠ることができた。先週マドリッドに着いた時にも体調不良と暇さとで死にそうなくらいきつかったなあ。遠い昔のことのように思い出す。

マドリッドでは誰もが「行ってよかった」と絶賛のトレドという街に向かうための列車予約と、トレドの後に向かうグラナダまでの夜行列車の予約を済ませた。


世界遺産にも登録されている古都トレドは、川に挟まれた地域で土とレンガで作られた中世の街並みがそのまま残る非常に趣のある町。しかし、駅に降りると嫌でも気付く。なんという日本人観光客の多さ!その人数を見てとっさに思うのは「宿が観光客に取られちゃうのではないか」ということ。今にして思えば皆さんちゃんと予約してきてるだろうから、その日に慌てて宿探しをするのは私くらいだっただろうけど、宿があるのとないのは死活問題なのでとにかく焦る。願わくば、噂に聞いた古城を宿として改装しているらしいユースホステルに泊まりたいのだが、右も左もわからない。ツーリストインフォメーションを探しても見つからず、開き直って「地球の歩き方」(当時の日本人にとってバイブルのようなガイドブック)を持っている日本人に直接尋ねてみると、ビンゴ!すぐに場所が分かった。言葉が通じない国では日本人に頼るのが一番だな。

トレドに入る橋の麓にある古城がユースホステルだった。なんと素晴らしい!しかも奈良から来た日本人学生たちと同じ部屋というのも心強い。

町並みはドイツのリューベックなどおとぎ話に出てきそうな可愛らしい街とはまた違った雰囲気で、土の壁と土の瓦でできた古い建物が多く、なんとなくこの飾り気のない感じが好きになってきていた。ナイフが有名らしく、旅も折り返したことだしお土産に一本買ってみるかと店に入ってみた。安いナイフは中国製でスタンプ押しただけ…なんて聞くと、ちょっといいものを買ってみようと奮発して職人の手作業による正真正銘のトレドナイフを購入。

これだけでもこの地に来た甲斐があったなんて満足しながら、砂埃を感じる古城の展望台に上って黄土色に乾いた街を見渡しながら一人のんびり過ごしていると、隣で同じく観光客風の中年男性も景色を楽しんでいた。

さあ、街歩きでも続けるかとその場を離れようとすると、隣の中年男性が困ったように何かを訊ねてきた。いやぁスペイン語はさっぱりわからないのに。おじさんは下の方で手を左右に動かしながら何かがあっちなのかこっちなのかと訊ねているらしいが、何があっちでこっちなのか、身振り手振りだけじゃなにも伝わらないよ…

と、思った瞬間「ん?」

あっちとこっちを指さすその手が何かに触れている。そう。おじさんは自らのズボンのチャックを開けてそのイチモツに触れながら、あっちとこっちと指さしているのだった。ハッとした私の顔を見てニヤリとしながらこちらのリアクションを伺っている。

ゾゾゾッ

こ、これが露出魔か!生まれて初めて会った!!トレドで!!はじめまして!いや、ちがう!凄まじい気持ち悪さ!

咄嗟にポケットの中でトレドナイフをぎゅっと握りしめながらも、驚いたら思うツボだと思い直し、一旦冷静にイチモツ確認させていただき、ため息をひとつ。明らかにつまらないものを見たという表情をしてゆっくりと後ろを振り返り、静かにその場を去った。

歩いて去った。

後ろ、付いてきてないよね。もう、いいよね。

おじさんが来ていないことを確認すると、あとはもうホステルに向かってビューーーン!一目散に走って走って走って逃げてきた!あーーーーーーん!ビックリしたよぉ!!自分で思った以上に恐怖を感じていたらしく、ホステルにたどり着くと足がガクガクと震え出した。その様子を見ていた奈良のルームメイト達が心配して寄ってきたので事情を話すと、「海外にもそんな人がいるの!?」と驚いていた。全く同感。変質者に国境なし。やれやれだよ…。とにもかくにも焦って買ったばかりのトレドナイフでヤツのアレを切り落とすなんてことにならなくてよかった。

人間焦った時ほど冷静になるべきだと身を持って知った出来事でした。

それにしても、だ。

あーーーあ、美しき古都トレドの印象が、一瞬にして全てあのおじさんの記憶で上書きされてしまった。かなしい。


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